色々ネタメモ置場。
修正しつつメインに移ったりもします。
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 兄さんと呼んでいるひとがいた。血の繋がりは定かではなく、あまりよく会う間柄でもなかったひとだ。歳は1つか2つだけ違って、殆ど会うことはないひとだった。

「あ、兄さん」
「うん。久しぶり」

 よくは知らないけれど、私たちは、互いの名前も年も素性も正しいことは何一つ知らないということを知っていたのだろう。

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(五・七のみ)

 人間なんて言葉よりずっと下等なくせをして。所有できると思っているの。

 彼女は言った。ことばのうちに、滲む殺意に背が冷える。鋭利な爪が彼女自身をやわくなぞって染みていた。心臓つかむ彼女の指を、そっとはなして深呼吸。
「言葉はね生かしてくれればそれでいい」
「人間なんかに興味はないと?」
「そういうことよ。無意味なの」

 放し飼いすら間違いなのよ。彼女は続け、僕を見た。聞こえるよ。不思議と貴方の声だけは。
「私の言葉も本当は」
「どこにも所有はないのだね」
「何時だって、私は言葉に食われてる」
「そりゃそうさ。貴方が其れを望むから」
「ばかなのね。望まなくとも誰しもが、言葉を持ってるふりしかしない」

 君はまた、僕の頭をつんざくように、そんな言葉で殺意を磨いだ。


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(里々)

 硝子玉で出来た瞳とその中に何も抱かない身体に出会ったのは、中学の最初か、まんなかくらいの事だった。自宅の物置の奥で。母の昔買ったという少女の人形。すっかり埃をかぶった箱の中に、彼女はいた。これが一番美しいと直感した。
 無機質であり無感情であることを、俺はずっと求めていたのだと妙な安堵を覚えていた。これを俺にくれとせがんだ。母は最初不思議そうな顔をしたが、仕方なさそうに俺に渡してくれ、そしてそれから今に至る。

 俺は彼女に尽くすことにした。学校では今まで通り普通のクラスの中堅層の軽そうな役を保っていたけれど(その点、当時の俺は中学校と言う暴力的なコミュニティの中でうまく取り繕うことができていたわけだ。慈草とはわけが違う)、家では自分の部屋で彼女といつも一緒に居た。
 黒い艶やかな髪が印象的だった。少し古めかしい服と、つややかな髪と、透明で深い色の瞳と。完璧にほど近い容姿を持ち、それらすべてに何の感情も込められていないことが、なによりも愛しかった。
 手先は元々器用だったから、材料から洋服を作ってやることも容易だった。新しい服に身を包んでも、彼女は決して感情を揺らすことはなかった。中学生の俺には小遣い制度が確立していなかった為、時々適当にちょろまかしては家族内で物議を醸していた。

  どんどんとのめり込んでいく俺を誰かはどう思っただろうか。俺の隣で書物に蝕まれて行った慈草は、きっとなにも思わなかっただろう。高校生になった途端に俺を放り出した家族は、少なくとも好意的には思って居なかっただろう。

 否、思って居なかったことなど手に取るように分かることだった上かえって好都合だとさえ思っていたが、敢えて、悲劇的に表す為に。身内にすらも投げ出された可哀想な少年であることを美しさの一環だと宣う人間に映る俺の印象を良くしようじゃあないか。
 実際の所、身勝手な放蕩息子タイプで兄とは比べものにならない屑で、落ちこぼれで、大金を使い込む糞野郎であったことは間違い無いのだが。


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水底に還る海月のはじまり
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 リスペクトとイミテーションとミミックの差異について。書いた覚えがある。またいつか書いてやろうと思う。アナタのようなクズのために。

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